リフォームの実務において、工事そのものの完成と同じくらい重要なのが税務上の手続きですが、これを軽視している施主の方が多いのが現状です。専門家の立場から言えば、リフォーム後の確定申告をしないことによる最大のデメリットは、経済的なメリットを完全に損失することに尽きます。所得税の還付は、本来納めすぎた税金を自分のポケットに戻す作業であり、これをしないことは国に寄付をしているのと同じです。特に、返済期間が十年以上のローンを利用して行う「住宅借入金等特別控除」は、年末のローン残高に応じて所得税が戻ってくる非常に強力な節税手段です。初年度の申告を忘れると、翌年以降の年末調整も受けられなくなり、トータルでは数百万円単位の差が生じることもあります。また、ローンを組まない場合でも、省エネ改修やバリアフリー改修、耐震改修などの「投資型減税」があり、これらは標準的な工事費用の十パーセント程度が所得税から控除される仕組みです。これらの申告を忘れると、当然ながら一円の恩恵も受けられません。さらに注意が必要なのは、贈与税との関係です。親などからリフォーム資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば非課税となる特例がありますが、これは「期限内申告」が適用の絶対条件です。これを怠ると、特例が受けられないどころか、多額の贈与税に加え、延滞税などの附帯税が課せられるという厳しいペナルティが待ち受けています。また、住宅の性能向上リフォームを行った場合、固定資産税が減額される措置もありますが、これも自治体への申告が必要です。確定申告と連動している場合もありますが、基本的には自己申告が原則です。もし申告を忘れてしまった場合でも、所得税の還付については「還付申告」として五年間は遡って手続きが可能です。しかし、これはあくまで還付に限った話であり、贈与税の特例などは遡及が難しいケースも多いです。対策としては、リフォーム会社との契約段階で、税控除に必要な「増改築等工事証明書」を発行してもらえるかを確認し、工事完了後すぐに書類一式を専用のファイルにまとめておくことが肝要です。申告は一度覚えてしまえば決して難しいものではなく、最近では電子申告(e-Tax)も普及しており、自宅からでも手続きが可能です。せっかく多額の費用をかけて住まいを再生させたのですから、その恩恵を最大化するためにも、税務の手続きを確実に完了させる責任を持つべきです。