マンションの部屋の壁紙が古びてきたり、デザインが気に入らなかったりした時、「自分で張り替えてみようか」と考える方は少なくありません。DIYはコストを抑えられ、達成感も得られる素晴らしい挑戦です。しかし、その前に、特にマンションという集合住宅においては、必ず知っておかなければならない大原則が存在します。それを知らずに始めてしまうと、後々大きなトラブルに発展しかねません。まず、最も重要なのが、あなたが住んでいるマンションが「賃貸」か「分譲」か、という点です。もし「賃貸」の場合、部屋の壁や床はすべて大家さんの所有物です。これを無断で張り替えることは、契約違反にあたります。退去時には「原状回復義務」があり、入居した時と同じ状態に戻さなければなりません。勝手に張り替えた場合、元の壁紙に戻すための費用を全額請求されるだけでなく、もし下地を傷つけてしまっていたら、その修繕費用まで加算され、高額な請求に繋がるリスクがあります。賃貸でどうしても壁紙を変えたい場合は、必ず事前に大家さんや管理会社に相談し、許可を得る必要があります。一方、「分譲」マンションの場合は、自分の所有物なのだから自由だろう、と思いがちですが、ここにも注意点があります。それは「管理規約」の存在です。マンションには、専有部分(自分の部屋の内側)と共用部分(他の住民と共有する部分)があり、リフォームに関するルールが管理規約で細かく定められています。例えば、隣の住戸との間の壁(戸境壁)は、共用部分と見なされることが多く、勝手に手を加えることはできません。また、大規模なリフォームと見なされる場合、管理組合への事前の届け出や承認が必要になることもあります。まずは、自分の部屋のどこまでが専有部分なのか、リフォームに申請は必要なのかを、管理規約でしっかりと確認することが不可欠です。マンションでの壁紙張替えは、一戸建てのDIYとは違います。始める前に、まず「ルールを確認する」こと。それが、トラブルなく、気持ちよくDIYを成功させるための、最初の、そして最も重要な一歩なのです。