室内の壁に生じるひび割れは、放っておくと見た目が気になるだけでなく、構造的な問題の兆候である可能性もゼロではありません。特に軽微なひび割れであれば、コーキング材を使ったDIY補修で十分対応可能です。しかし、ただ単にコーキング材を塗れば良いというわけではありません。プロの視点から、内壁のひび割れをコーキングで美しく補修するためのコツをいくつかご紹介します。 まず、ひび割れの「見極め」が非常に重要です。ヘアクラックと呼ばれる幅0.2mm程度の細いひび割れは、建物の乾燥や収縮、軽微な振動によるものがほとんどで、コーキング補修に適しています。しかし、幅0.3mmを超えるひび割れや、天井や壁のつなぎ目以外の部分に斜めに走るひび割れ、そして繰り返し同じ場所に発生する場合は、構造上の問題が潜んでいる可能性が高いです。このような場合は、自己判断せずに専門業者に調査を依頼するべきです。無理なDIYは、かえって問題を悪化させることになりかねません。 次に、「下地処理」を丁寧に行うことです。ひび割れの周囲に付着したホコリや汚れは、コーキング材の密着性を著しく低下させます。古い歯ブラシなどでひび割れ内部のゴミをかき出し、固く絞った濡れ雑巾で拭き取った後、十分に乾燥させることが大切です。下地が汚れていたり湿っていたりすると、せっかく補修してもすぐに剥がれてしまう原因になります。また、ひび割れの縁がめくれている場合は、カッターなどで軽くV字型にカットして、コーキング材がしっかりと食い込むようにすると良いでしょう。 さらに、「養生」は仕上がりの美しさを左右する重要な工程です。コーキング材を塗布する前に、ひび割れの両側にマスキングテープを貼ることで、余分なコーキング材が周囲に付着するのを防ぎ、直線でシャープな仕上がりになります。テープを貼る際は、ひび割れから均一な幅を保ち、しっかりと密着させることがポイントです。そして、コーキング材を塗布し、ヘラでならし終えたら、乾燥する前に手早くマスキングテープを剥がしましょう。乾燥後に剥がすと、コーキング材がテープと一緒に剥がれてしまったり、きれいに仕上がらないことがあります。 これらのコツを押さえることで、ご自宅の内壁のひび割れをプロのような仕上がりで補修することが可能です。